仮面ライダークウガ総括


仮面ライダークウガをオススメできる人


・正統派ヒーロー物が見たい人
・熱いヒーロー物が見たい人
・泥臭いアクションが見たい人
・刑事ドラマ的なヒーローものが見たい人
・リアルなストーリーを見たい人
・子供向けヒーローなんて飽きた! と思ってる人
・高寺さん
・オダギリジョーのファン
仮面ライダークウガをオススメしない人


・白倉伸一郎氏
・正統派ヒーロー物が嫌いな人
・CGを使った派手なバトルが好きな人
・昭和ライダーが最高だと思ってる人
・退屈な展開が嫌いな人
・盛り上がりまくるバトルが好きな人
・戦闘BGMが大好きな人
・高寺Pが嫌いな人
・響鬼の前半が大嫌いで、逆に後半がかなり好きな人


良かった点


・五代雄介のヒーロー性

私がクウガを高く評価してるのは、五代雄介がヒーローらしいメンタリティをしっかり大事にした点がウェイトを占めています。
「こんな奴らのために・・・! これ以上誰かの涙は見たくない! みんなに笑顔でいてほしいんです! だから・・・・・・見ててください! 俺の・・・・・変身!」
この一言で五代雄介は強く優しくカッコイイヒーローとして確立しましたし、平成ライダーの礎を一発で築きました。
・リアルな描写を交えた戦闘アクション
泥臭く、暑苦しさの漂うアクション。
特にペガサスフォームの超聴覚とか、図鑑で軽々しく描かれるトンデモない設定をストーリーに取り込んだのは面白い試みでした。
・一条さん
クールでかっこいい、紳士的で天然、そしてタフな不死身の刑事・一条さん。
五代雄介以上の完璧超人でした。
この人がいなければ五代は何処かで倒れていたのではないでしょうか?

でも携帯をマナーモードにすることは忘れます

・椿さん
命を大切にする医者の鏡のような人物。女好きだったり五代を解剖してみたいなどと、やや軽い性格をしていながらも、生命に対する観点は作中で誰よりも真っ当で熱いものを持っていました。
とりわけ、蝶野との対話(※井上回の方)が非常に素晴らしかったです。
・爽やかな最終回
リアルタイムで見た際には、とても爽やかな気持ちになれた最終回でした。
何よりも、青空が素敵でした。
徐々に五代を思い出す人々が続き、五代が最後にEDと共に登場したところ。喧嘩を諌め、笑顔で何処かを旅する場面。
これは初見で感動を覚えました。
今見ても感動します・・・。


悪かった点


・やや退屈なストーリー展開
確かに盛り上がる話は結構あったんですが、その合間合間に主人公とは無関係の人物のエピソードが多く挿入され、やや退屈さを感じてしまいました。
・神崎先生、および彼の作中に散見される『若者への偏見』
神崎先生の話で顕著な話題なんですが、この作品はやたらと若者を敵視し、やたらと「昔はよかった」と嘆く場面が多く見られました。挙句の果てにはグロンギと若者を同列に並べて考える始末。
・・・これには呆れました。
本当に今(2000年)の若者が昔の若者よりも酷い存在なのか、科学的に、統計学的に証明する証拠はあるのでしょうか? 
ンナ゙ニヲジョーコニドンドコドーン!! 
単にそういったニュースが多く報道されただけで、実際は過去にも若者の犯罪は起きています。昔は良かったというのは所謂思い出補正に過ぎないと思われます。
この点から、私は彼の出てくる話が好きにはなれませんでしたし、彼自身も好意的には見られませんでした。
確かに父を失って傷心の五代にサムズアップを教えたことは評価されますが、教師として現代の子供と向き合う努力が作中で見られない以上、私は彼を好意的に評価できませんでした。
・後半の夏目実加の扱い
五代雄介が戦う決意を固めた少女。
ですが、何度も作中で登場したにも関わらず、やや後半での彼女の扱いは微妙でした。ダグバ戦においても彼女が登場することはありませんでした。父を殺された、最初にして最大の被害者であるにも関わらず。
この子が登場することで、ダグバへの怒りを視聴者が抱かないようにし、暴力否定を徹底的なものとするためでしょうか? それとも役者の事情?
ただし、小説版では活躍してました。本編における実加ちゃんの扱いに不満のある方は、小説版を一読されることを推奨いたします。
・『クウガ症候群』を植え付けてしまった
クウガの美点にして、同時に問題点でもあるのはコレではないかと思われます。
リアリティ志向こそ正義!
シリアスでハードな大人向けこそ至高!!
子供向け? そんなのノンノンカノン!!!

こんな感じの風潮は、クウガ以降、視聴者側にも制作側にも増えたように思えます。私はこれを、『クウガ症候群』 と呼称させていただきます。
確かにそういった志向も一つの考え方としてありでしょう。ですが、仮面ライダーもスーパー戦隊もプリキュアも、あくまで子供向け番組であることに変わりありません。
アバレンジャーは「クウガ2」をコンセプトに作られたと制作側が明言されていますし、仮面ライダー剣は「クウガ」を意識したと會川先生が仰っております。これら以外にも、クウガを強く意識した特撮作品は多いです。
しかしながら、クウガ以降、子供が見てどう楽しめるかそういった視点が抜け落ちることが多くなった作品(響鬼、キバなど。ファンの方はごめんなさい)がしばしば散見されるのは残念に思います。
もっとも、これは必ずしもクウガそのもののせいではなく、あくまでもクウガを至高とした考えから一歩抜け出せない側に問題があるのでしょうけど。
・作中で見られる思考の方向性が、やや一方的
・本人の努力ではどうにもならない不運『も』重なった蝶野を、ただひたすら否定的に描く(※荒川回の方。井上回はアレで文句なし)
・孫にろくな教育もしてない祖母が、榎田さんを批判する展開がある(もちろん作中で榎田さんは肯定されましたが)
・あまりにも徹底的な暴力否定(後述)
このあたりに関しては、ちょっと共感はしづらかったです。とりわけ、蝶野に関しては五代のアンチテーゼ的存在でしたので、もう少し登場させて五代と絡ませる話があっても良かったと思います。
賛否両論の点


・本当に、グロンギは殴ることが悲しい存在なのか?
正直、グロンギの設定、およびそれに対しての戦いに五代が悲しむのは、やや不可解でした。
作中でのグロンギは、殺人をゲームとして楽しみ、言語が通じても思考は通じない、話し合いの余地はない倒すべき存在として描かれました。謂わば、設定としてはミラーモンスターやファントムに近いものがあります。
これが人間由来のオルフェノクやドーパント(まぁ基本メモリブレイクだけで死にはしませんけど)ならば、まだ倒すことを悲しむのも理解できます。
ですが、グロンギは人よりかは害獣に近いような存在でした。それを倒すための戦いに悲しみを覚えるというのは、黙って首を縦に振りづらいものがありました。
五代が全ての生命を大事にする青年として描かれていればまた別でしたが、彼が鳥や花や獣達を愛でる場面は、私の見る限り殆どありませんでした。
もっとも、逆に考えれば「どんなに悪辣な存在であろうと、暴力での解決は許されない」ということを描きたかったのでしょう。ですが、私には残念ながら納得がいきませんでした。
暴力否定を描きたいのなら、最終的に敵と暴力以外で解決できる存在にし、且つその手段を示すべきだったかと思います。
(執筆時現在は、まだ最終回は見てませんが)敵との対話・和解で終わらせたスイートプリキュア♪みたいに。
・それまでの『仮面ライダー』の常識を破壊した
仮面ライダーは基本的に、悪の組織へ孤独に立ち向かう戦士でした。確かに支援してくれる人間や存在はいましたが、それはあくまでも補助的な役割に過ぎません。戦場に立つ際は、本質的には孤独でした。
タックルやモグラ獣人、バトルホッパーなど、戦闘で補助してくれる仲間はいましたが、それでも個人の協力の範囲に留まりました。『ライダーVS組織』の構造を、全面的に守ってきたのです。平成ライダーシリーズにおいても、殆どの作品はこの構造に従っていました。
しかし、クウガは警察と協力して戦いました。警察という組織が全面的にバックアップしてくれたわけです。
精神的なサポートでも、肉体的な面のケアでも、武装の面でも。
これは「ヒーローはどうして警察といっしょに戦わないの?」という問いへの答えでもあり、リアルな戦いを描いたという意味では評価されます。
しかし、逆に考えると、ヒーローが組織(それも国家組織)に頼るというあるまじき行為とも言えます。
この番組のOPでもありますが、「英雄はただひとりでいい」のです。それまでの仮面ライダーが孤独に戦っていたのは、隣に誰かを立たせることで彼らを傷つけたり悲しませたりしないためです。
また、ダグバ戦では、生身で泣きながら戦う五代とダグバが描かれます。
これは、ある意味『仮面ライダー』の常識を打ち砕いた衝撃的なものでした。
何故なら、初代からずっと、仮面ライダーはその仮面で涙や悲しみを隠し、戦う戦士でした。少なくとも、戦いの間に涙を流す者は誰ひとりいませんでした。
例えば、萬画版の本郷猛は改造人間の証たる顔の傷跡が浮かび上がるのを嫌い、仮面をかぶって戦いました。
RXの南光太郎は、信彦を失った涙を子供たちには見せず、ひたすら笑顔で見送りました。
これらの「ライダーの常識」をぶち壊したことは、衝撃的でもあり、革新的でもありました。
意外にも、アギト以降の作品とりわけ白倉作品の方が、好き嫌いこそ別れますが
「孤独に戦う仮面ライダー(氷川さんや響鬼ライダーなど例外はいますが)」
「組織VS個人」
「決して悲しみを誰かに見せず戦う」

等の、伝統的な構図を律儀に守っていたりします。
加えて言うならば、こうした伝統を破った点が昭和ライダーファンにとって気に喰わない点でもあったのでしょう。私としては、なんとも微妙な感じで、どっちとも言いがたいところですが。
総括


仮面ライダーの常識をぶっ壊した作品。
それがクウガに対する評価と言えるでしょう。
先にも述べましたが、クウガはそれまで仮面ライダーで常識としていたことを見事なまでに破壊しました。
クウガ以前の仮面ライダーは、以下のような特徴があると私は解釈しています。
・単純明快なストーリー
・悪の組織と戦う孤独なヒーロー(例外は多々ありますが)
・どこか影がありながらも気丈に振る舞う主人公達
・でも悲しみを仮面で隠し、戦い続ける
・ちょっぴりユーモラスな悪の怪人達
・戦いが終わった後も、何処かで新たな戦いのために去ってゆく

しかし、これらの常識をクウガは尽く破壊しつくしました。
・複雑でハードなストーリー
・警察組織と協力して戦う
・爽やかな笑顔の純粋で明るい主人公
・しかし内面は戦い続けることに苦しみ、最終的には仮面を脱ぎ捨て泣き出す
・全く同情や共感の余地のない邪悪なグロンギ
・戦いが終わったあと、冒険の旅に出て笑顔で旅を楽しむ

総括いたしますと、『クウガ』は仮面ライダーの枠を破壊し、新たなライダーの枠組みを作った記念すべき作品と言えるでしょう。
個人的には受け入れづらい面もありましたが、素晴らしい作品であることには変わりありません。何故なら、五代雄介はヒーローとして絶対に欠かせない三要素を持っていたからです。
・どんな敵をも乗り越えようとする心の強さ
・絶対に他人には笑顔で接し、自身の苦しみを見せない強さ(個人的には影で苦悩する姿が見たかったですが)

そして、
・少女の涙を見て、熾烈な戦いに臨むことを誓った優しさ
それゆえ、私はクウガを完全無欠の神作とは言いませんが、名作だったと考えています。
同時に平成ライダーを振り返るにあたって、この五代雄介の精神性が後作ではあまり顧みられていないことを残念にも思います。
平成ライダーに欠かせない要素。
それは、だれかの涙のために戦えること。これこそが絶対条件だと考えています。
制作スタッフの皆様には、ぜひともこの精神性を忘れずに頑張っていただきたいと心から願っております。
薔薇社長的な仮面ライダークウガの評価



・アクション:上の上ですね。特にバイクアクションがカッコいい。
・ストーリー:中の上ですね。確かに盛り上がり所はありましたが、退屈な回も少なくなかったです。
・キャラ:上の上ですね。みんなキャラが立ってました。
・主人公:上の上ですね。五代のヒーロー性には感服せざるを得ません。
・デザイン:中の上ですね。他作品に比べると、ややデザインは地味でした。動物の特徴もやや分かりにくいです。
・総合:上の中ですね。やはり完全無欠の作品など存在しません。
しかし、伝説を塗り替え、平成ライダーの礎となった記念すべき作品であることに変わりはありません。



ベスト5
1.第2話(五代のヒーロー性が光る名回、そして平成ライダーの始まり!)
2.第49話(爽やかな良い最終回!)
3.第35話
(ジャラジの卑劣さに恐怖しつつも、同時にクウガの怒りを否定すると言う、革新的な回)
4.48話(泣きながら生身で戦うという、衝撃的な回)
5.14話(井上大先生による、椿先生が輝く話)
ワースト5
1.26話(小学生が彷徨う話後編。ストーリーと戦闘がリンクしてないのがつまらない)
2.11話(神崎先生の話。サムズアップの話は良かったが、今の若者をグロンギと呼ぶ神崎先生にまったく共感できなかった。)
3.41話(五代の名言はいいけど、「最近の若者は~」的な描写が気に喰わなかった)
4.45話(さゆるくん編前編。榎田さんよりも義母の無責任さに腹が立った)
5.特になし


その他オススメ回
7話(ユネスコ村大恐竜探検館とか、超聴覚描写が斬新)
19話(クウガがキノコ胞子で死にかける回)
20話(五代が復活したその後、キノコクローンをムッコロス話)
28話(怪人に怯える妊婦さんの描写と彼女に掛けられる言葉が良かった)

仮面ライダークウガ総括」への4件のフィードバック

  1. >そうだったんですか!? 高寺さんがそんなことを!?
    ああ、ごめんなさい
    制作者本人達が言ったんじゃなくて間違いなくクウガに影響を与えた作品として言っただけです
    実際に観ていただければ何故俺がこう言った理由を分かってくれるかと思います
    (タイガーセブンは試聴が難しいけれど)
    シルバー仮面は頼れる仲の良い兄弟達がいるのに唯一変身能力を持つ主人公がなんか孤独だし
    タイガーセブンに至っては本当に殆どクウガなんですよ

    でも拡張した書き方をしてすみませんでした

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    • なるほど、そうでしたか・・・。

      シルバー仮面は分かりませんが、タイガーセブンはブレイド最終回に結末が似てると聞いたことがあります。

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  2. ストーリー面では退屈なところも目立ったように思います
    もちろんジャラジの回や蝶の関連の回みたく面白い話もありましたが
    クウガ症候群に関しては概ね同意しております
    実際ウルトラマンでもネクサスはもろ
    こういった風潮を受けたように思います
    (ただ僕はネクサス好きですがw)
    意欲的な名作であると同時に
    勘違いシリアス厨を生み出した作品でもあると思います

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    • コメントありがとうございます。
      なるほど、クウガがお好きな方でも退屈という印象は持たれる方もいらっしゃるのですね。

      >クウガ症候群に関しては概ね同意しております
      ありがとうございます。正直、反感を買うような内容だと思っていましたので、そう言っていただけると安心しました。

      >ネクサスはもろこういった風潮を受けたように思います
      ネクサスは555にインスパイアされたという話を聞いたことがあります。

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